求人のこれからの変化
大学生でありながら勉学をしないでいることは、自信構築の観点から見てよいことではない。
インタビューで「僕は大学入学時から〈怠け者〉で〈落ちこぼれ〉です」と笑顔で語った学生もいるが、大方は第1章での「〈遊んでいても〉後ろめたくて」で述べたように、「遊んでいる」ことに罪意識を感じている。
「不安があったから楽しめないことが多かった」「自分は向学心がない入学前は夢も持っていたのに」などと、勉学に背をむけ逃避している自分を責めている。
またのY子のように、卒業を半年後に控え、就職の内定をもらったにもかかわらず、学生生活をサークルに賭け、〈勉強をしなかった〉という思いで将来が不安な者もいる。
「1流企業なのでみんな粒ぞろいだろう、勉強してきたのだろうと思う。
その会社でやっていけるか自信がない」と語る。
Y子の例は、部活などに情熱を燃やし、目標を持って学生生活を送っていれば自信力はつくと思いがちであるが、必ずしもそうではないことを物語っている。
1般的に言って、確かに何かに没頭できるものを持っているほうが持っていないより学生生活の充実感も自信力も高いが、すでに調査結果を見たように、勉学が伴ってはじめて自信力が高いというケースが大半だ。
「大学時代は部活にかけた。
勉強から学んだことは少なかったが人付き合いから得るものは大きかった」と語った学生の自信力も、Y子同様決して高くない。
大学は人間関係を学ぶところ、と割り切って部活をしていても、どこかに後ろめたさが残る、ということかもしれない。
勉学を投げ出していると感じている学生は、傍目にどう見えようと、不安感と焦りをどこかに感じている。
勉強せずに逃避している自分を尊敬できないということだ。
勉学とサークルをきちんと両立させてきた自信力は、平均値を大きく上回る。
生たちの自信力をもっと高めてゆく道を探ってゆく。
学生が望む授業とは何か、どんな授業にすれば学生の自信につながるのか、である。
その際、勉学に背を向け悶々と暮らしていた学生たちの中で、「立ち直り」、勉学と向き合い、悩みを行動に変えてゆくようになった経験も追う。
「悪友」から誘われると、「バイトだ」と言って家へ帰り、机に座る習慣を取り戻した。
自己K発の本を読んで目的意識を持った。
あるいは夜昼逆転の生活をしていて授業を休みがちであったため、心機1転のために引越しをした。
しっかり勉強したいと思ったら、何らかのアクションを起こして、まず生活のリズムを取り戻す。
それからくだらない話題。
とにかくうちの家庭は夫婦・親子で話をするのが好きです。
学生がどのような授業を望み、授業のどこを改善してもらいたいと思っているかを探る。
主な項目は「教員ともっと接触したい」「学生参加型授業の利点は何か」「学生同士の連帯が生まれる授業がいい」「やりがいのある課題がほしい」「大教室でも授業中質問したい1人前での発言と自信力との関係」である。
学生が、実はまじめに自分の能力を伸ばしたいと思っていることが理解できるだろう。
自分の力をきちんと伸ばしているという実感が伴った時、学生1人ひとりの自信力が高くなる。
大学という教育の場で学生の自信力を高めるためにできることは、学生側、大学側の双方にたくさんある。
試験でも勉強しない、課題もやらないという〈怠け者〉層は10%である。
これらを除けば、残りの65%は授業担当者のやり方次第、あるいは学校のシステム次第で勉学に励んだり励まなかったりする厚い層である。
その観点から、65%の学生たちのやる気を引き出すために、学生たちが望む授業改善について検討することは重要である。
筆者は予備調査の段階で、2大学25名ほどの学生にアンケートを試験的にやってもらい、アンケートの質問内容に関する討論のセッションを持った。
学生たちの意見・提案がもっとも多かっだのは、2校ともに「授業改善について」であった。
つまり授業改善にそれほど関心があるということだ。
るのは「教員が学生と授業外でも、コミュニケーションを取る」である。
82%、つまり圧倒的多数の学生が、授業改善の方法として「教員が学生と授業外でもコミュニケーションを取る」がもっとも有効だと考えていることになる。
〈授業外でも〉ということは個人的な接触をも望むということだと接触を持ちたいと願うのだろうか。
またなぜ授業改善につながるのだろうか。
これから見てゆくように、教員の中には個人的な接触を心がけている教員もいる。
また担任・アドバイザー制度などを設けて、学生と教員ができるだけ接触する機会をつくろうとしている大学も多い。
調査からわかったことは、全体として見た場合、教員と学生との接触はあまりにも少ないということである。
学生は勉学のために教員にアドバイスを求めに行くことすらあまりない。
教員に勉学の相談に今まで行ったことがあるかをアンケート質問紙の中で問うたところ、「相談したことがまったくない」「1度か2度」の合計は約8割にのぼった(「まったくない」は46%、「1度か2度」は30%)。
また「学内の教員に個人的に話しかけられる経験はどれくらいありますか」という問いに対しても、ほぼ同様な結果になった(「めったに声をかけられない」は36%、「声をかけられたことは全然ない」は39%)。
このように学生と教員は疎遠な関係にある。
教育機関に少なくとも4年間いる以上、学生が〈教員にもっと指導してもらいたい、目をかけてもらいたい〉と願うのはごく自然なことであろう。
調査校中、筑波大学とともに、授業満足度のもっとも高い大学である東京電機大学理工学部は、教員に勉学の相談に行く頻度、学生が教員から個人的に話しかけられる頻度が調査校全体の平均と比べるとかなり高い。
同学部では、学生がくつろいだり勉強をしたりするオープンスペースが教員の研究室のそばにあり、学生たちは研究室に出入りするだけでなく、「オープンスペースで勉強していて、先生が通りかかると教えてもらい、〈普通〉の会話をしたりする」という。
1般的に言って、日頃から教員と学生の授業外でのコミュニケーションが成り立っていると、授業はより円滑に進むと言える。
ある学生がインタビューで語った言葉は、如実に表している。
「正直言って、大学の教員というのは学生にとって遠い存在。
でも授業中、先生の学生時代のこととか、研究のこととか身近な話をちょっとしてくれるだけでも親近感が湧く。
共有するものがあるという思いを持てて、授業にも乗り出して聞くようになる」。
教員に親近感が湧くと学生は授業でのわからないところを教員に聞きやすくなり、聞いてわかるようになると授業満足度が高まるというよい循環が生まれる。
「学生が自分の授業を受けて何を感じているのか、何を学んだかなど、どうでもよいように見える先生が多い」という学生のコメントをH紀で紹介したが、学生は教員が学生に愛情や関心を持っているかどうかに非常に敏感である。
学生が教員ともっと接触したいと思う理由は、授業内容をより理解するためというだけではない。
彼らは教員が自分の専門をどのような経緯で選んだのか、長年研究していて飽きないのか、教員が大学生の時に何を考えていたのか、研究以外ではどんな暮らしをしているのかなど、個人的な関心も持っている。
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